バイト先での治療。
患者は30代の女性。
左下6番(#19)の再根管治療と支台築造処置であった。
MBとMLは合流している可能性が高いという事実、近心から偏心撮影した事実を考えると、このガッタパーチャが入っているのはML根と考えられる。
CBCTを撮影してもらった。
やはりMLにはガッタパーチャが入っていた。
しかしMBには何もない。
根尖病変がある。
ということはMBが勝負の分かれ目になる。MBを穿通させ根管治療することができれば勝負に勝てるかもしれない。
MLはこの状態から考えてもおそらく穿通しないだろう。
ではMBは穿通するのか?それは私にはわからない。しかし穿通するように努力するのが治療だ。
そのためのオプションも私にはある。
また、2根管の歯が根尖病変を持っており1根管だけ穿通してどれだけ根尖病変が治るのか?私はそのような論文を今まで読んだことがないのでわからない。しかし、全く掃除できないよりは治る可能性はあるだろう。
次がD根である。
D根はガッタパーチャで根充してあるが直線的に舌側に変異して根管充填してある。
これはハンドファイルで治療してあるなと容易に想像できる。
そして本来の根管の形態から逸れていることも想像できる。
しかし根尖病変がない。
根尖病変がなければ穿通しようがしなかろうが成功率は90%以上だ。ということは以前のブログでも書いた通りだ。
という自分の考えをカウンセリング時に患者さんには伝えた。
勝負は#19のMB根が穿通するかしないかだ、と。
そして治療となった。
が、いきなり伝達麻酔をしようとしたらかなりビビられた。
今までそんなことしたことがないからだそうだ。
若い先生へ。いいですか、これが日本の歯科医療の現状なんです。
今の歯科医師は伝達麻酔もしないで根管治療するんです。
でも命には関わり合いはないけど。
伝達麻酔+頬神経ブロックをして10分時間をおいて口唇・舌の痺れを確認し再根管治療はスタートした。
作業長は
MB=14.0mm
ML=閉鎖
D=閉鎖
であった。
全ての根管でMAF=#40.04(ただし根管の3/4を最終的に#50.03で形成)であった。
そして最大の懸案だったMBが穿通した。
これは治る可能性が高いかもしれない。
ポイント試適しガッタパーチャポイントの位置を確かめて、根管充填して支台築造してレントゲンを撮影した。
MLは穿通しなかったがあと一歩のところまでは追い詰められた。
D根は前医が処置した根管充填は無視した。
いいのか??
根尖病変がないのだ。
あなたがレントゲン的な興味があれば手をつけてもいいが私はないのでそのままである。
ということで治療は終了した。
あとは3ヶ月待っていただき症状がなければ補綴治療だ。
その後症状が出れば外科治療である。
これを治療開始して終了まで1.5時間。
1.5時間??時間かかりすぎでしょ??と言われる先生。
じゃああなたも1.5時間で終了してみてください。
絶対に無理だから。