バイト先での治療。

患者さんは60代男性。

初診時には左下小臼歯の咬合痛を主訴に来院されていた。

歯内療法学的検査は以下になる。

#22 Cold+3/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#21 Cold N/A, Perc.(++), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#20 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

PAは以下になる。(PAはこの歯科医院は1枚しか取らない)

PAをみた第1印象は、不適合冠が装着されているという事実である。

近心のマージンの直下は歯槽骨である。

こんな修復が許されるのはこの地域の?特徴??なのだろうか???

さて私は患者に以下のような説明を行なった。

まず代表的な治癒する可能性だ。

根尖病変があり、再治療でも穿通しない場合の再治療の成功率はおよそ60%である。

が、この歯には不適合修復物が装着されている。

その場合、根尖性歯周炎ができることは多くの論文で指摘されているとおりである。

Ray, Trope 1995

これはカウンセリングにも使用できる有効な論文だ。(もちろんこの逆の結果になっている論文、両方大事だとする論文もあるが)

質の高い根管治療(Good Endo=GE)を行い、質の高い修復治療(Good Restoration=GR)を行うと、根尖病変ができない可能性が91.4%もあることがわかる。

しかしながら、質の高い根管治療を行なっても(Good Endo=GE)、質の悪い修復治療がなされていると(Poor Restoration=PR)その予後は44.1%になってしまう。

逆に質の悪い根管治療を行なっても(Poor Endo)、質の高い修復治療を行うと根尖病変は67.6%もある。

このことは、根管治療よりも修復治療の方が根尖病変の防止に有効的であるということを示している。

これには色々な意見があり論文ではこの逆の意見もあるし、両方大切だという意見もあるが、感覚的には私は正しいと思っている。

そのような臨床体験が何度もあるからだ。

つまりこの根尖病変はこの不適合補綴物が原因である可能性があるかもしれない。

であれば、再根管治療でマネージメントが可能である。

という話を行ったところ、患者さんは再根管治療に同意した。

再根管治療を行なった。(2021.3.23)

もちろん、1回法で終了している。

穿通はしていない。

さてここから数ヶ月が経過した。

PAを撮影したが、それ以上に初診時にあった主訴が消失していた。(2021.5.24)

根尖病変は消失していない。

さてここからさらに数ヶ月経過した。治療から半年経過している。(2021.9.28)

初診時の痛みは既にないままである。

根尖病変もほぼ消失している。

時間をおけばさらに消失していく可能性が高いだろう。

ということは、この根尖病変の原因はなんだったのだろうか?いえばおそらく不適合修復物が原因だろう。

この歯はエンドが原因ではなく、不適合修復物が原因で根尖病変ができていたに違いがない。

また、半年後に経過を追うことになっている。

その際にこの症例の変化を報告したい。