バイト先での治療。
主訴は
左側で咬合すると痛くてものが噛めない
であった。
歯内療法学的検査(2023.7.18)
#12 Cold NR/20, Perc.(-), Palp.(-), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#13 Cold NR/20, Perc.(-), Palp.(-), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
大臼歯は存在せず、今まで小臼歯で咬合していたと言う。
破折も疑われる案件だが、これだけではわからない。
PAを撮影した。
#12, 13 PA(2023.7.18)
#12にも#13にも根尖病変が見える。
#12は、断髄して病変が出ている。
その理由は修復物だ。
PAはPeriapical Viewで根尖部を見るレントゲンである。
にもかかわらず、修復物が全くあっていない。
これでは先日、マイクロエンドRe-RCTマンツーマンコースの記事に出したようにコロナルリーケージが原因で根尖病変ができてしまう。
なぜこの治療後にこのような修復を行ったか?といえば、
保険診療だから
だ。
もうこのHPで何度も言うが、
保険診療で歯科治療を行うことはやめた方がいい。
理由は?上のPAで明らかだろう。
CTも撮影した。
#12,13 CBCT(2023.7.18)
#12
石灰化が進み根管が判然としない。
が、実際穿通できるか?はCBCTでなく、根管治療が決めるのだ。
術前の見通しとしては、機能咬頭であるP根の方が湾曲が大きい。
そこにB根が合流する形が最も理想的な根管形成が可能になる。
が、P根が穿通しなければB根をメインにしてP根をサブにしなければならない。
どうなるか?はこのブログでも何度も言うように、CBCTではなく根管形成が決め手になるのだ。
次が#13である。
#13
根尖部に大きな病変がある。
穿通は必須である。
2根管性であるという前提で前医は治療をしている。
しかし、
Vetucci 1974 Root canal morphology of the human maxillary second premolar
によれば、
上顎第2小臼歯の解剖学的形態はその75%が1根管である。
そして残りの24%が2根管性で、
残りの1%が3根管性だ。
私は上顎第2小臼歯に3根管性と言うのを未だ見たことがない。
であれば、疑いの目を持つとすれば、
本当に2根管性なのか?
と言う疑惑の目で見てしまう自分がいる。
口蓋側の根管充填材のすぐ隣に根管のような形態を認めるがそれが本当に根管なのか?は誰にもわからない。
要はやるしかないのだ。
やってみて、もし穿通もしなければその際は治療計画を変更してApicoectomyへ移行するがとにかく試してみないことには何もわからないのである。
そしてそれ以上に大事なことは、
#12,13ともに根尖部に危険な解剖学的要素がない
ことだ。
上顎洞にも近接していない、下歯槽神経もない(当たり前か)のでシーラーパフが緊密に根管充填できたか?の評価のポイントになる
だろう。
#12,13 歯内療法学的診断(2023.7.18)
#12
Pulp Dx:Previously initiated therapy
Periapical Dx:Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx:RCT
#13
Pulp Dx:Previously treated
Periapical Dx:Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx:Re-RCT(穿通しないのであれば、Apicoectomyへ変更)
それぞれ、RCTとRe-RCTになった。
#13は穿通しなければApicoectomyに変更予定である。
☆この後、臨床動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
#12 RCT(2023.7.18)
根管口にあるのは何だろうか?
懐かしのブローチ綿花だ。
あれは卒後2年目の時だ。
ある地域の某歯科医院に勤務していた。
その際、そこに勤務していた歯科衛生士から、
“この人(私)はブローチ綿花が巻けない!”
といびられたことを思い出す。
その歯科医院は院長から、自己都合でやめたことにしてくれと言われた。
当時は意味がわからなかったが、今ならゴネているだろうw
それはさておき、ブローチ綿花などで根管内を乾燥するのは日本の保険医だけだろう。
異物反応を起こす元になるような材料(で根管内を乾燥すると言う行為自体がこの業界ではタブーだ。
もちろん、アメリカでそのような道具で根管内を乾燥している臨床家はいない。
日本の
“The 保険医”の根管治療でのみ見られる
景色だろう。
それを知らなかったあのDQN歯科衛生士は今どこで何をしているだろうか?
今も誰かを、
“ブローチ綿花が巻けない!”といじめているのだろうか?
あの人は、元・五輪選手の吉田沙保里にクリソツなおばちゃんと言うイメージしかもう私には残っていない。
このように保険診療歯科医院には絶望しかないだろう。
このHPを読んでいる歯科医師のあなたが、今、別の歯科医院で危うい待遇を受けているとすればそれは肩叩きだ。
なぜそう言うことが起きるか?と言えば、それはその歯科医院が
保険診療が主体の歯科医院だから
である。
歯科医院の経営を回せないあなたは邪魔者で使えない人間だ。
そう言う社会がまともな社会だろうか?
私には意味がわからない。
そう言う私は、ちなみに、もう10年以上も保険診療をしていないが。
さておき、このブローチ綿花が取れない。
鋭い短針があればまだしも、それもないからだ。
以下の道具を購入してもらう必要がある。
Endodontic Explorer JW17
このように物品がないと歯内療法にならないことが多い。
と言うことで短針がないのでSXで上部を拡大してブローチ綿花を除去する作戦に出た。
この状況で根管内のブローチ綿花は全て取れたと信じて、作業長を測定した。
C+10でB,P共に穿通した。
作業内容は以下であるが、
B,Pともに#25.V→#40.04まで拡大し、#35.04のGutta PerchaでBC sealerでSingle Pointで根管充填している。
根充後のPAは#13のRe-RCTが終了してから撮影するので後ほど紹介する。
#13 Re-RCT(2023.7.18)
1根管であると疑い根管形成していったが、結局2根管性であった。
それか穿通できなかったか…
わからない。
この不透明さが再根管治療のネック部分だ。
治療内容は以下である。
PAを最後に撮影した。
術後の根管からはシーラーパフが確認された。緊密な根管充填の証左である。
が、日本ではやめろと言われるけども。
ということで1回法で2本の根管治療が終了した。
次回は1年後である。
その際の変化をまたご報告したい。