紹介患者さんの治療。

主訴は

右下ブリッジの咬合痛。ものも挟まるし不快極まりない…

であった。

歯内療法学的診断(2023.7.13)

#29 Cold+3/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#31 Cold NR/20, Perc.(+), Palp.(-), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

主訴は再現できている。

PA(2023.7.13)

近心根管の形成が不十分だ。根管充填も不良である。

何より、ラバーダムせずの歯内療法である。

細菌を排除するどころか、穴を掘ってそこに誘導させている。

これが医療過誤と言わずして何が医療過誤だろうか?

また、患者さんに詳しく話を聞くと#30も根管治療をしていたがいつまで経っても終わらず、担当歯科医師から抜歯を勧められてそれに従ったという。

結果、無傷の#29が見るも無惨なOnlayタイプのアバットメントになってしまったという。

これが不幸と言わずして何が不幸だろうか?

このように、

補綴治療は人を幸せにしないことは明らかだろう。

仕方なくやるならわかるが、

無理やり#30を抜歯され、

#29を大きく削られ、

挙句不適合のInlayを入れられたというのは不幸でしかない。

このように、

真面目に歯科医院に通う人ほど歯がなくなる運命にある

と言わざるをえない。

真面目でお金がない人は、あなたの歯は守れないだろう。

よく記憶しておきましょう。

また肝心の根管治療であるが、

樋状根の根管形態を知らない人が根管治療をしていると思われる。

このような形態になることは少ない。

まずはCBCTも見てみよう。

CBCT(2023.7.13)

M根

D根

B根

CBCTでは根管充填された状態が太い拡大に見えるが、実際のPAはだいぶ違う。

そう。

これがPAとCBCTの見え方の違いだ。

ここから何がわかるか?と言えば、

CBCTだけで歯内療法はできないし、PAだけでも歯内療法はできないと言う事実である。

D根に根管充填されたGutta Percha PointはKinkしている。

根管形成してそこにGutta Percha Pointが入らなかったから押し込めたのだろう。

米国歯科大学院生がよく注意される事象だ。

日本では…誰もそんなことは言わなかったので私は知らない。

さて。樋状根の形態とはどのようなものだろうか?

より臨床的には、やはりここでも Castellucci Endodonticsが有効である。

(Castellucci EndodonticsとGoogleに入れて検索するとPDFが手に入るだろう。)

そこのVol.1に以下のようなことが述べられている。

MB根管にファイルを入れるとD根管かML根管に合流することがわかっている。

そう。

C-shapedは合流することが多い。

ということは根管形成・根管充填する時にこれを意識しなくてはならない。

つまりメイン根管を形成した後にGutta Percha Pointを挿入し、合流部分にファイルを入れて傷をつけなければならない。

下顎大臼歯のMLとMB, 上顎大臼歯のMB1とMB2の関係に似ている。

また以下のようなパターンもある。

DBにFileを入れるとMBへ合流した。

Gutta Percha PointをMBに入れてDBにK Fileをいれてグリグリやるとこのような傷がつく。

MB根周辺の根尖病変は治癒している。

問題がない状況だ。

このような状況になることが多いと頭に入れて治療をしなければならない。

逆にこれを頭に入れると、上記の患者のPAはよろしくないPAだということがわかるだろう。

また私が以前治療した樋状根の症例を見てほしい。

上記の患者のPAとは全く違う状態になっているということがわかるだろう。

私の歯内療法の中での最長の経過観察症例〜#31 Re-RCT, 治療から10年経過。

歯内療法学的診断(2023.7.13)

Pulp Dx: Previously treated

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Re-RCT

推奨される治療は再根管治療だ。不十分な根管治療と言わざるを得ない。


☆この後、臨床動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。


#31 Re-RCT(2023.7.13)

まずメタルポストコアを除去した。

近心・遠心の半分で2分割して、セメントラインを出してそこVPチップを当てると除去できる。

この動画だけでセミナーに出る必要性がなくなるだろう。

この後、虫歯を除去し根管治療を行った。

DとMBが合流していることがわかったのでDをメインにしてMBはそこに合流しているという形を取ることにした。

以下のように合流を確かめている。

傷を元に作業長を決定した。

以下のようになる。

根管充填した。

BC sealerのB根からの逸出が合流根管の正しさを示している。

支台築造してPAを撮影した。

問題はないと思われる。

次回は1年後である。

そこで問題がなければ最終補綴でいいだろう。

またその模様はお伝えします。