紹介患者さんの治療。

主訴は、

左上の前歯が痛くて夜も寝れなかった。前歯は数年前に治療したが、他院でやり直した方がいいと言われ治療開始して数ヶ月経過するが、未だに終わらないので、かかりつけ医に転院したところ、ここを紹介された。時間がないので治療は1回で終了してほしい

であった。

⭐︎この後、検査動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。

歯内療法学的検査(2024.6.11)

PA(2024.6.11)

CBCT(2024.6.11)

#8

根管口部が太く形成されている。

歯牙の垂直性歯根破折の原因になる。

やめろと言ってもそれをやる歯科医師に国が税金を委ねるわけがない

だろう。

生かさず、殺さず。

それが歯科医師を生育させる最大の方法だ。

#9

ここもApical Foramenは破壊されているように見える。

しかし、Tryしてみないとわからない。

#10

湾曲に追従した根管形成ができていない。

それは、ハンドファイルで形成したからだ。

何度もいうが竹槍では飛行機を打ち落とせない。

以上の事柄何がわかるか?であるが、最大のポイントは術前の補綴が極めていい加減であるということである。

しかも、謎のPin tek。

このような仮歯は、仮封をしていないことと同等として我々の業界では評価されている。

が、だ。

Sinus tractもできてない。

そして、患者の主訴は#10であった。

歯内療法学的診断(2024.6.11)

#8,9,10

Pulp Dx: Previously treated

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Re-RCT

ということで、同日治療へ移行した。

☆この後、治療動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。


#8,9,10の順に治療を行なった。

その心は?

そう時間がかかる部位から優先的にやろうという話である。

#8 Re-RCT(2024.6.11)

K File #60で尖通した。

ということは…

この根管は根管形成ができないという事実である。

HyFlex EDM #60.02を根管に挿入した。

Reference Pointまで私が所有する最大のNi-Ti rotary fileが挿入できた。

ということはこの歯には根管再形成はできないという事実が突きつけられたのである。

はっ?#70.80のK Fileがあるだろうが!

で?

#60→#70まではわずか16%の、

#70→#80まではわずか14%の

拡大しかできない。

#60→#80までだと、33%だが今更Stepback techniqueをそこにしろとでもいうのだろうか?

そうすれば治るのだろうか?

私はそのようなデータを知らない。

それ以前に、この歯は根尖部が破壊されているのだろう。

こういう場合は再根管治療に意味をなさない場合が多いが、術前の不適合修復物(Pin Tek)の存在を考えると逆転勝利があるかもしれないし、治癒しなければApicoectomyがあるじゃないか、という話である。

#8,9,10 Re-RCT 3年経過の予後〜外科治療を拒否した患者さん⇨Re-RCT>>>Surgical Endodontics

無意味な医療行為に時間は使用しない。

このまま洗浄し、超音波の力を借りて洗浄し(Passive Ultrasonic Irrigationして)、根管充填した。

はっ?

MTAだけで根充しろよ!というあなた。

一言アドバイスすれば、時間と費用の無駄です。

さっさと適合するGutta Perchaを選んでMTAシーラーとともに根充しましょう。

次が#9である。

#9 Re-RCT(2024.6.11)

#9も所有するNi-Ti Fileの中で最大の#60.02が何の抵抗感もなく作業長まで挿入できた。

これが意味するところは?

そう。

ここも再根管形成はできない、という事実である。

この歯もPassive Ultrasonic Irrigationして根管充填した。

#10 Re-RCT(2024.6.11)

最後がレッジが付与された#10のRe-RCTである。

ここが一番、再根管治療!という歯であろう。

以上の再根管治療の内容は以下になった。

最後にPA, CBCTを撮影した。

#8

#9

#10

ということで次回は1年後だ。

またその模様を報告したい。