以前の歯科医院での治療。
ここのところ、またしてもコロナ騒動でどこも患者が受診を控える傾向にあり、私の仕事も今週は殆どなかった。
これがバイト歯科医師の辛いところだ。
お前はもうバイトでいいと私に2019年に博多の飲み会で告げた歯科医師はその責任を取ってくれるだろうか?
いやあ、忘れてるだろう。
あの人がそんなことまで記憶しているはずがない。
これから私はこの世の中で生きていけるのだろうか?と不安になったりする。
ということで今回もネタがない+暇で時間を持て余しているので、以前の歯科医院で行っていた治療を振り返ろう。
九州の遠方からの40代の女性の患者さん。
飛行機で博多までやってきていた。
主訴は
主治医に抜かないといけないと言われたが、私は前歯を残したい
というものであった。
痛みはあるときでも3~4/10で今は1程度。ほとんど何も症状などないのに、なぜ私の歯を抜こうとするのか?という前医での不信でいっぱいの様子の患者さんであった。
歯内療法学的検査は以下のようになった。
#7 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)
#8 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(+), BT(+), Perio probe(WNL), Mobility(+1)
#9 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)
PAは以下のようになる。
#8の根尖部に大きな病変がある。
が、メタルポストが深く入りすぎていてこのままでは3mmも切断できなさそうだ。
かと言って再治療が可能だろうか?といえば、歯質が殆どない。
これなら臨在歯にインプラントがあることから私はインプラントのほうがいいのではないか?と提案したが、このインプラントを埋入するときにすごく痛く、術後もだいぶ腫れたそうだ。
なので、それがトラウマになり、前歯のインプラントは死んでもしたくないという。
しかし、多くの?このブログを御覧の歯科医師の皆さん。
これが今の日本の歯科患者の大多数の声です。
おかしなことをこの人は一つも言っていません。
ちなみに‥#7にも根尖病変が見られた。
私は、留学前の2009年にアメリカの歯周病専門医の東京・銀座開業の藤本浩平先生に唯一歯周病を教わった。
が、その時言われたのは
前歯にインプラントできるような症例は日本人は殆どない
ということだった。
しかし、前歯に立派な?インプラントが埋入されている。
ご丁寧にCBCTも添付されていた。
#8である。
メタルポストの先端から歯根端まで計測すると、1.4mmしかない。
どうやって3.0mm逆根管形成+逆根管充填するのか‥?
次に怪しい?#9の隣在歯もCBCTで観察してみた。
すると衝撃の事実が判明した。
歯槽骨の中に埋入されていない。
恐らく、前歯なので審美性などを考えたのだろうが私には意味がわからない。
しかし、日本のこのブログを見ている1日約400~500名の患者さんへ。
これが、日本の歯科医療のレベルなんです。
あなたは、自称インプラント専門医に前歯にインプラントを埋入してもらいますか?
しかもこの患者さんは、隣に大きな根尖病変がある。
このままだと臨在歯のインプラントにも根尖病変ができてしまう、いわゆるPeri-implantitisを引き起こしかねない。
(日本の歯科医師の方々、私が何を言ってるか?説明がわかりますか?インプラントに根尖病変ができるんですよ?)
ということでどのような治療をしていくか?という話になった。
(#7も同時に再治療という話になった。)
歯内療法学的診断は以下になる。
Pulp Dx: Previously initiated therapy
Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: Apicoectomy
Prognosis:Guarded
さて、私はこの患者にどうしてApicoectomyを勧めたのか?といえば、以下のような論文があるからだ。
まず1つ目はGilheany 1994である。
歯根端切除を抜去歯牙で行った。
そしてDye leakage testを以下のように行っている。
肝になっているのは、Derkson 1986の保存修復の論文だ。
この実験で得られた理屈をアピコにも応用している。
さてこれをアピコに応用するとどうなるだろうか?
そう。切断量が1.0mmしか取れなくても90度に切断できればリークはない。
ただし、細菌が減るとか減らないとかいう話ではない。
また、1.0mmしか逆根管形成できないがアピコはできるだろうか?
特にMTAにはある程度の厚みが必要だとDentsplyは語っているが。
Rahimi 2008の論文を参考にしてみよう。
1mm, 2mm, 3mmどれが最も細菌を防いでくれるだろうか?
ということで、バクテリアはそれほど減らないかもしれないがこういう方法があると患者さんには説明した。
患者さんは治療を希望したため、外科治療へ移行した。
2017.7.21のことである。
根尖部が90度になるように慎重に切断(研磨に近い)した。
MTAを1mmに逆根管形成窩洞に逆根充した。
術後約半年が経過した。(2018.2.28)
更に治療から1年が経過した。(2018.8.30)
#7の根尖部の病変が大きくなっているが、アピコを希望していないし痛みがないのでそのままにしていた。
さて、これから約3年。
まだ機能していれば私にとってはものすごく嬉しいことだが‥
この歯が今でも機能しているのか?私にはわからない。
しかしながら、このときこの方法以外は解決方法はなかっただろう。
メタルコアを削る先生もいるが、メタルタトゥーが嫌なので私はその方法を採用することはできなかった。
ということで、この患者さんの予後を私はどうしても見たいと思っている。
再度会える日は来るだろうか?