3/13(日)は博多駅近郊会議室で、歯内療法 Advanced Course 2021 第10回が行われた。

前回、話漏れたEndo-Perioの重要論文の解説、Endo-Orthoの解説、GTR&GBR in Endodontic Surgery, Resorption, Endodontic Traumaの解説, 受講者によるCaseの発表等を行う予定であったが、十分に時間がなくその中でも大事であると思えるものに関して講義を行った。

ここで先に結論を言うと、この日に解説をしきれなかった項目に関しては後日日程を調整してZoomで補講を行います。

調整さんで日程は決めていきますのでしばしお待ちください。


まずはEndo-Perioの重要論文の解説。

いわゆるSimonの分類に関して講義した。

一体、どのような特徴があっただろうか?

特徴を捉えることができただろうか?

エンドペリオ文献で有名な文献は何個かある。

以下の文献が有名である。

以上の文献からどのような結論が得られただろうか?

よく良く考えてスライドを見返してみよう。


次にEndo-Orthoの解説。

が、ここは時間の関係でかなり早足での解説を余儀なくされてしまった。

ここは、補講で再度整理し直してお伝えいたします。

すいません。


次にGTR&GBR in Endodontic Surgery。

ApicoectomyではGTRやGBRは不要である。

その理由を解説した。

元となる素材は

Complications in Endodontic Surgery: Prevention, Identification and Management (English Edition) 2014th

である。

これに関しては先月のlit reviewで行っているので、それをベースに解説した。

GTRを行わない理由は何だっただろうか?

以下のスライドのこの部分が大事である。

上皮細胞や線維芽細胞をブロックしたいのであるが…

解剖学的に既に基底膜がブリックしているし、

骨窩洞周囲の間葉系細胞が繊維芽細胞に分化してしまう。

すると、GTRの膜を置こうが置かまいが、その臨床的意味合いはほぼほぼない。

まあ実際にGTRの膜を使用している臨床家を私は知らない。

面倒臭いものはこのように淘汰されるのである。

次に、ではApicoectomyでGBRを行わない理由は何だっただろうか?

私がかつて、GBRされた患者のApicoectomyを行なっている。

その際はどうであっただろうか?

GBRが意味がある処置だっただろうか?

見た目にこだわる臨床家になる必要があるだろうか?

初診時(2018.5.31)

2018.7.10(Apicoectomy直後)

2018.10.1(Apicoectomy 3ヶ月経過時)

結果を出せる臨床家になってもらいたいと強く思う。

どうなるか?は、あなた次第である。

ここで時間が尽きてしまった…

残りのResorption, Trauma, Endo-Orthoに関してはZoomで補講を行う予定です。

内容や日程は後日メールいたします。

よろしくお願いいたします。


昼休憩に入り午後14時からCase発表を行った。

Advanced Courseは外科にFocusしたコースであるのでそうしたプレゼンテーションを期待はしていたが、通常の根管治療のケースなども発表していただいた。

それぞれの歯科医院の事情でケース症例は異なってくる。

そのCase内容は以下になる。

A先生

#30 Apicoectomy

#31 Intentional Replantation

Apicoectomyはしたことがない!と言う先生がいきなり右下のApicoectomyに挑むと言うすごい症例であったが、臨床家は結果が全てである。

問題なく治癒を示している。

また、この先生はIntentional Replantationも行っていた。

Intentional Replantationに関してはイスムスの形成が必要ではないのか?と言うところもあるが、3ヶ月後のPAを見ると治癒傾向を明らかに示している。

イスムスの形成は必要ないのか?それとも本当にそこにイスムスはなかったのか?

それは時間経過のみが知らせてくれる。

やはり、臨床家は結果が全てなのだから。


B先生

#2 Intentional Replantation

2.5ヶ月しか経過していないが急速に治癒傾向を示している。

しかし、この口蓋根をよく抜歯できたものである。

事実、脱臼しなければ抜けない。それがわかったのではないだろうか?

そして脱臼させたからと言って問題が出ただろうか?

問題があるのではないだろうか?と思うのであれば、

Andreasen 1981 The effect of limited drying or removal of the periodontal ligament. Periodontal healing after replantation of mature permanent incisors in monkeys

の文献をもう一度読んでみよう。


C先生

#3 Re-RCT(患者都合で外科治療へ導けず)

1ケース目も2メース目も、最初から外科治療の適応症であるが患者さんの希望でできなかったと言う。

勤務の先生は大変だ。

色々な悩みもあると思う。

しかし、これだけははっきり言いたい。

あなたが開業すれば、あなたはあなたの自由にやれるのである。

今は耐える時です。自分を消して頑張ってください。

明るくもない?未来はすぐ先にあります。

しかし、未来を明るくするのも、暗くするのも先生次第なのです。


D先生

#2 Intentional Replantation

D先生は最近開業した女医さんである。

彼女は私がかつて勤務していた場所の近くで開業した。

そして彼女の歯科医院に私が勤務していた時に、私がその勤務先で入れ歯をsetした患者さんが来られたそうだ。

かなり昔の話をされていたそうだ。

懐かしい。

しかし、私は、今も昔も入れ歯のことは全くわからない。

が、その話を聞いて懐かしくなった。

一人の開業は大変ですが、私も一人です。共に頑張りましょう。


E先生

#1  根管治療→移植

術前の#19の予知性が低いことから、同部を抜歯し#1の根管治療後に#19へ移植させると言う作戦である。

私はインプラントをしていないので、歯槽骨を時にはドリルで削る必要があるこの方法はもはや行っていない。

この受講生はそれを易々とやり抜けていた。

器用である。

そして処置もうまくいっている。

今は色々なしがらみの中で大変だと思いますが、夢を実現させてください。

私は先生を応援しています。


F先生

#18 Intentional Replantation

F先生もIntentional Replantationを症例として提示いただいた。

舌側にSinus tractがある。

舌側の歯槽骨は既に歯頸部あたりで穿孔していた。

残念ながらVRFが見える。

しかし、この先生はそのまま突っ切った。

破折を残したまま、Intentional Replantationをコンプリートしている。

3ヶ月が経過している。

3ヶ月リコールの時点では症状等は全くないという。

動揺度もないという。

が、おそらく長期には持たないだろう。

もし何かやるとすれば、破折線を削ってBiodentineで埋めることくらいだ。

とはいえそれが長続きするかもわからない。

この後ろに親知らずがある。

これを利用して歯牙移植した方が私はいいと思うが、患者はヘビーな外科処置をしたくない(Intentional Replantationも十分重いと思うが…)そうで拒否されたそうだ。

うまくいかなければ、#17-18-19-20のFPDに移行するという。

であれば、この状態しかないだろう。

この先生も勤務されている先生である。

東京でかつて行なっていた勉強会で知り合った先生だ。

与えられた環境の中で頑張りましょう。


G先生

#12,13 Apicoectomy

驚いたのは症例に対してではない。

このFPDを外すと…

コーヌスブリッジ?のようなものが姿を現した。

なぜこんなものを使用してブリッジにするのか?といえば、支台歯の本数に注目してほしい。

これは保険診療で認められていないブリッジだ。

しかもインプラントと天然歯をつなげている。

これも禁忌である。

そして保険で認められていないブリッジの中には適当な歯内療法した歯がぶち込まれている。…

世の患者さん、これが歯科医療の現実です。

Apicoectomyを術者はルーペで行なった。

文献ではルーペでもマイクロスコープでも前歯や小臼歯の外科治療の結果に差がないからである。

写真の歯茎に注目していただきたい。

術直後

術後1週間(抜糸時)

3ヶ月経過時

歯肉の状態はどうだろうか?

私にはやはりこの修復物の周囲の歯茎の状態がいいようには見えない。

しかし、これは補綴治療をする人間の問題であるので歯内療法の人間には関係がないのだ。

バイト力も強いことが予想される。

#14 Intentional Replantation

私には口蓋根の破折が疑われた。

Intentional Replantationを行った。

2ヶ月は定着したばかりなので、治癒しているかどうか?の判定は下せない。

もう少し間を置いて評価した方がいいだろう。

#2 Intentional Replantation

術直後

術後1週間経過

この症例も経過を見るのが早すぎる。

1週間では変化はPAの上では何も出ないからだ。

しかし、最後にこの先生は感想をつけてくれた。

永遠に機能させることはできないかもしれないが、延命はできる。

プロ野球の中継ぎ投手のような役目を果たすのが歯内療法だろう。

それを意識できただけでもこのセミナーに参加していただいて意味があったのではないだろうか。


H先生

H先生は某国公立大学の口腔外科の出身の先生で、最多の4症例を提示してくれた。

外科に習熟している先生である。

そしてマイクロサージェリーを行なっている。

こういうところが口腔外科は強い。

#13 Apicoectomy

Sinus tractは#12寄りにあるが、歯内療法学的検査でCold+, EPT+であることから#12が原因である可能性は排除される。

ということで恐らく、#13が問題であろう。

CBCTは以下である。

根尖部が近心に湾曲している。

処置時に#12を巻き込まないように注意が必要であろう。

処置を行なった。

予後を追跡した。

さすが、口腔外科医である。

口腔外科医が正しい知識を身につけて対応すれば無敵だろう。

#9,10 Apicoectomy

口蓋が腫脹している。

しかし、顔面は腫脹していないのでこれでもChronic Apical Abscessである。

CBCTは以下になる。

Through and Throughで絶望しかない。

が、だからといって、瘢痕治癒するか完治するかは関係がない。

私はそういう症例を持っている。

ということで、先生はApicoectomyの予約を取ったのだが…

病院歯科で外科治療を受けることとなった。

が、この先生はその病院歯科がやばいことを知っていたので、ああご愁傷様ですという気持ちになったという。

が、患者さんは3年後に戻ってきた。

腫れたので病院歯科に行ったら、まずはかかりつけ医に行きなさい、だそうだ。

こういうのを、

責任の回避

という。

日本の歯科医師の特徴かもしれない。

なぜか、逃げるのだ。

なぜ逃げるのか?といえば、正しい知識が頭の中に入っていないからである。

無知は恐ろしいのである。

この先生はパノラマを撮影した。

#9,10共にApicoectomyはしているが、逆根管形成・逆根管充填をしていない。

これではせっかくの処置が台無しだろう。

意味がなくなってしまう。

CBCTをこの先生は撮影した。

骨透過像は以前と比べると縮小している?が、ほとんど何も変わっていないに等しいだろう。

そして、この担当口腔外科医は責任を回避している。

意味がわからないに違いない。

なのであれば、処置をしなければいいだけなのだ。

なぜ自信がないのにしゃしゃり出て処置をしようとするのだろうか?

私には意味がわからない。

この先生がFixした。

なお、右上1番にも問題があるが、患者さんが治療したくないそうだ。

それならば仕方がないが、この先生はこの処置を保険診療でしている。

私は思う。

この先生は、代診を雇えば自分自身が好きな診療ができるだろうに、と。

また後日の経過は見せていただく約束をした。

#5 Apicoectomy

右上4をApicoectomyしている。

CBCTは以下である。

Apicoectomyを行なった。

VRFである。

ここで諦めて抜歯をするか?追いかけるか?

この先生は以下のように対応した。

根尖部の歯槽骨は回復している。

歯周ポケットも7mm⇨3mmになっている。

このことから、これでよかったのか?とこの先生は自問自答している。

これに関しては、真面目な人ほど悩むようだ。

私は一切悩まない。

なぜか?

こうした処置を受け入れるかどうかは、患者さん自身が決める問題で我々が決める問題でないからだ。

では、エビデンスはないのか?と言われれば、確かにこういう処置にエビデンスはない。

が、術中の写真はVRFはあるものの、歯根全体に及んでいないことが確認できている。

ということであれば残せる可能性はあるのかもしれない。

これからも経過を見ていかなければならない症例である、といえる。

処置を決めるのは、患者であり術者ではない。

勉強させられるケースである。

最後のケースは前歯のApicoectomyであった。

#7 Apicoectomy

上顎のApicoectomyの依頼である。

右上2のApicoectomyである。

CBCTは以下になる。

これは今までよりも楽な処置だ。

問題が出るようなことはない。

昨年教えた、Lid techniqueで逆根管充填した。

病変はかなり縮小している。

このケースを見ていただければわかると思うが、

歯内療法は外科治療に精通しているとそれだけで有利になる。

最終的には、Apicoectomyしなければ問題が解決できないからだ。

口腔外科医が正しい歯内療法外科の知識を持てばそれだけで強いだろう。

鬼に金棒になるからだ。

以下、この先生の感想。

外科治療の方が楽しいし、治癒率が高い

歯科医師ならば一度でもそう言いたいセリフをこの先生は既に述べている。

外科的なスキルがあるというのはそれだけで強いのだ。

何よりも武器になるだろう。

今後も頑張ってください。


I先生

I先生は私と同門(長崎大学歯学部出身)の先生で倒れる前からCourseに出られていた先生である。

#1 自家歯牙移植(#3へ移植)

この先生はインプラントは一切していないという。

ではなぜ自家歯牙移植できるのか?聞いてみると、

歯骨鉗子で抜歯した後の歯槽骨を破壊する

そうである。

なるほど…私にはそのアイディアはなかった。

そして上記の症例であるが、1級窩洞をレジン充填のみして終わっている。

そしてそれは9年目を迎えている。

歯内療法した歯はクラウンにしなくてはいけないのではないのだろうか?といえば、口腔内ではこのように違う出来事が起きている。

このように、臨床は自分の後ろ姿を見せることができる。

クラウンの費用がかからなければ、それだけで患者は大喜びだろう。

素晴らしい処置である。

#17 自家歯牙移植(#31へ移植)

処置から11年目を迎えるが問題が起きていないという。

この歯もレジン充填で終了して長い時間が経過している。クラウン修復を必要としていない。最後方臼歯なのにだ。

この地域にはこんなに優れた臨床家がいたのだ。

素晴らしいの一言です。

貴重な症例をありがとうございました。


J先生

関西の大きな法人に勤務している先生で毎回PCを持参しケースをいっぱい入れていた。

私は彼はもう開業した方がいいと思うが、彼はまだ勤務して勉強したいという。

まあそれも人生なので頑張れ、としか言いようがないが彼はやるだろう。

以下のケースを発表してくれた。

エンドペリオのケースである。

しかし難しいのは、Cold+, EPT+であるという事実だ。

これだけ考えると、ペリオではないか?

という話になるが、複数根管のどこかが生きていて、どこかが死んでいる可能性がある。

であればー根管治療が突破口になるかもしれない。

患者さんは治療に同意して根管治療が行われた。

MB, MLから出血があるということは、そこが反応に寄与したと考えられる。

Dは失活していた。

3ヶ月後に歯周ポケットは正常へと戻っていった。

エンド⇨ペリオ病変だったのである。

それは、治療した結果から分かることである。

さらに彼は経過を見た。

現在、補綴治療は接着で治療するそうだ。

ということは、私のイメージでは以下のように装着するのが普通、常識となる。

縁上形成して、ラバーダムをかけてクラウンを装着している。

これであれば私は納得できる。

今の補綴治療はこういう治療なのか?

私は知らないが、かなりきちんとやっている先生だ。

これを見ても早く開業すればいいのにと思うが、まだやることがあるらしい。

先生、頑張れ。

先生なら関西で屈指の歯科医師になれるでしょう。

また色々情報教えてください。


最後は、Current literature reviewも手伝ってくれている

M先生

のCase発表であるが、ここまで白熱してしまい彼の時間がなくなってしまい1ケースのみ発表していただいた。

続きは、Advanced Course 2022の第1回で彼に発表してもらうこととなった。

Advanced Course 2022の参加者はラッキーである。

その中でも、彼は論文に取り上げられたケースを発表した。

Journal of Dental Sciences

絶望しか?湧かなくなる歯槽骨の喪失である。

ただし、#10,11はCold testに反応しているので患歯ではない、ということがわかるだろう。

治療しなければならない歯は#8,9(上顎両中切歯)である。

治療計画は#8,9の根管治療、開窓、ApicoectomyだそうだがApicoectomyは口腔外科が担当するという。

で、歯内療法科には感染根管治療のみしかさせないそうだ。

頭が痛い。。。

が、とにかく色々な方の協力で以下のような状態までに持っていった。

2年経過して状態はかなり良くなっている。

歯槽骨が回復しているのがその証左である。

が、逆根管充填剤は使用していない。

これはのちに問題を起こす可能性を残している。


ということでCase発表は全て終了した。

最後に。

みなさん、1年間お疲れ様でした。

歯内療法は外科治療ができなければ話にならないということがわかったでしょう。

根管治療はもちろんできて当たり前ですが、外科ができなければ話になりません。

それを胸に秘めて明日からの臨床に取り組んでみてください。

2021年は色々なことがありました。

悲しいこと、嬉しいこと、さまざまなことがありました。

これからの人生は何が起きるかわかりません。

あなたが、あなた自身の人生をマネージメントしなければいけません。

そして終わりは必ずきます。

終わった時に後悔をするような歯科医師人生を送ってほしくはありません。

あなたがどうするかは誰にも決める権利はありませんが、あなた自身で決めることができます。

人生の主役はあなたなのですから。

1年間、ありがとうございました。

また補講でお会いしましょう。

詳細はこのブログやメールでお知らせいたします。

みなさん、ごきげんよう。

お元気でさようなら。