週末日曜日はまつうら歯科医院で
Introduction Course 2023
が行われた。
参加者は今年からBasic Course 2023に参加する受講者が2名と、過去のBasic, Advancedの受講者の合計3名であった。
このコースは予備校の春季講習のイメージである。
つまり、まさに”Introduction”だ。
だが、他の先生より先に学ぶことができるというメリットがある。
そしてこれは私の講義に共通することだが、
私の講義は私のスライドを勝手に携帯で撮影しても構わない。自由に撮影してください。
ということである。
欲しいなら動画撮影でもしてください。
ということで今日は1日で、
歯髄検査の方法
PAの撮影の仕方
CBCTの解析方法
ラバーダム防湿
伝達麻酔を行い、ラバーダムを行い、その状態でPAを撮影する
PAの偏心撮影
の6つの項目に関して行なっていった。
まず診査・診断である。
Keyは以下である。
私のブログでよくある表現だ。
患者の主訴を再現できなければ歯内療法では勝てない。
それは不必要な治療になってしまう。
ということで実際の検査に…
行く前に最低限覚えなければならないのは以下の病名だ。
Pulpal Dx
Normal pulp: A clinical diagnostic category in which the pulp is symptom-free and normally responsive to pulp testing.
Reversible pulpitis: A clinical diagnosis based on subjective and objective findings indicating that the inflammation should resolve and the pulp return to normal.
Symptomatic irreversible pulpitis: A clinical diagnosis based on subjective and objective findings indicating that the vital inflamed pulp is incapable of healing. Additional descriptors: lingering thermal pain, spontaneous pain, referred pain.
Asymptomatic irreversible pulpitis: A clinical diagnosis based on subjective and objective findings indicating that the vital inflamed pulp is incapable of healing. Additional descriptors: no clinical symptoms but inflammation produced by caries, caries excavation, trauma.
Pulp necrosis: A clinical diagnostic category indicating death of the dental pulp. The pulp is usually nonresponsive to pulp testing.
Previously treated: A clinical diagnostic category indicating that the tooth has been endodontically treated and the canals are obturated with various filling materials other than intracanal medicaments.
Previously initiated therapy: A clinical diagnostic category indicating that the tooth has been previously treated by partial endodontic therapy (eg, pulpotomy, pulpectomy).
Apical Dx
Normal apical tissues: Teeth with normal periradicular tissues that are not sensitive to percussion or palpation testing. The lamina dura surrounding the root is intact, and the periodontal ligament space is uniform.
Symptomatic apical periodontitis: Inflammation, usually of the apical periodontium, producing clinical symptoms including a painful response to biting and/or percussion or palpation. It might or might not be associated with an apical radiolucent area.
Asymptomatic apical periodontitis: Inflammation and destruction of apical periodontium that is of pulpal origin, appears as an apical radiolucent area, and does not produce clinical symptoms.
Acute apical abscess: An inflammatory reaction to pulpal infection and necrosis characterized by rapid onset, spontaneous pain, tenderness of the tooth to pressure, pus formation, and swelling of associated tissues.
Chronic apical abscess: An inflammatory reaction to pulpal infection and necrosis characterized by gradual onset, little or no discomfort, and the intermittent discharge of pus through an associated sinus tract.
Condensing osteitis: Diffuse radiopaque lesion representing a localized bony reaction to a low-grade inflammatory stimulus, usually seen at apex of tooth.
これがそれぞれどういうことなのか?を解説していったが、ここで一つ。
これが英語だから難しいと思っているあなたへ。
本当に難しいですか?
歯科英語は受験英語ではありません。
通常の英語は単語の意味がわかれば誰でもわかるのです。
大学受験の英語に毒されているとしたら、今すぐ忘れましょう。
ということでこの中でわかりにくいのは、以下であろう。
1. Normal pulpとReversible pulpitisの違い
Normal Pulpはsymptom-freeでnormally responsive to pulp testingだという。そしてReversible Pulpitisはinflammation should resolve and the pulp return to normal.だという。
この二つの意味の違いがわかるだろうか?
と言えば、理解するためには以下の前提条件が理解されていないとわからないだろう。
歯内療法の検査は比べる歯がなければできない。
つまり、治療する歯(疑わしい歯)だけを検査するわけではないのである。
これが理解できなければ永遠に何を言っているか?わからないだろう。
例えば、
この上の写真の歯が全て同じリアクションだったら(例:全ての歯が1分近く痛く感じるのであれば)、全ての歯はNormal Pulp Tissuesである。
が、このブルーだけが強く反応し、その痛みがすぐ戻るのであればReversible Pulpitisだろう。
そうつまり、
診断には隣在歯との比較が必ず必要
ということがわかる。
これを頭に入れて、Cooley 1978 の文献も理解しましょう。(スライドを見てください。)
2. Asymptomatic irreversible pulpitisとは??
そしてよく聞かれる謎が、この上記の病名である。
意味がわからないと言われる。
不可逆性歯髄炎なのに何で症状がないんだ?!というやつだ。
これは説明(解説に)以下のようにある。
no clinical symptoms but inflammation produced by caries, caries excavation, trauma.
症状はないが、炎症がカリエス、虫歯除去、外傷によって生じたもの
だという。
症状があるから歯髄炎が起きるのではないか?というあなた。
そんなあなたに理解してもらうべきKey wordは,”Silent Pulpitis”であろう。
Silent Pulpitisとはどういうものであっただろうか?
”Dental Pulp”にはどのように書かれていただろうか?
スライドをよく復習しましょう。
3. Condensing Osteitisとは?
日本語では硬化性骨炎と呼ばれる病態?である。
英語では以下のように説明されている。
Diffuse radiopaque lesion representing a localized bony reaction to a low-grade inflammatory stimulus, usually seen at apex of tooth.
根尖部周囲の骨組織に低程度の炎症が起きている状態とされる。
Green 2013の文献から以下のようなレントゲン的な画像の変化を紹介する。
ちなみに以下のPAは実際の人で治療したものだ。(治療前後のPA)
再根管治療を行うとこのように硬化性骨炎は消失したように見える。
さてこの変化が起きる前後のCondensing Osteitisの歯牙の根尖部の歯槽骨を採取して病理で見て本当に歯内療法的疾患との因果関係があるか?どうかを研究する!ような研究はもはや不可能だが、それをカダバーで歯槽骨を採取して病理で見てみたという研究を紹介した。
そこには以下のように書かれていた。
The histologic changes of condensing osteitis consisted of the replacement of cancellous bone with compact bone. Areas of fibrosis and an inflammatory infiltrate were seen in some but not all specimens. All teeth exhibiting condensing osteitis had an identifiable etiology that likely resulted in degenerative pulp disease.
そこには必ずしも炎症があるとは言えないがそういう状態の歯はには退行性の歯髄疾患があったと書かれている。
ということは総合的にいうと治療をするべき疾患と言える。
ということで本題に戻ろう。
各種検査をそれぞれ紹介した。
Pulp Test
Pulp Testは
Cold test
Heat test
EPT
とあるが、私がUSC時代のとき周りは全くHeat testとEPTをしていなかった。
私はと言えば、日本で当時教わった通りに全てをやっていたのである。
ある日、周りの同級生に
”なぜみんなはそんなに早く検査を終えているんだ?”
と質問した時だ。
”Heat testやEPTはしていない”
と答えられた。
私は愕然とした。
が、この日は彼らがそう言う、”その理由”を講義で説明した。
以下のスライドがポイントになるだろう。
さてこの3つのスライドから言える結論は何だろうか?
スライドをよく復習しましょう。
そしてこれらの検査がなぜ歯髄の病気を推測する手がかりになるのか?については、Abbott 2007の文献を使用してご説明した。
そしてPeriapical testに関しても説明した。
Percussion
Palpation
Bite test
の3つが必要な検査だ。
この3つの検査のポイントを説明した。
そして、Sinus tractに関しても説明した。
以下の記事も参考にしていただきたい。
そして最後にAAEのColleagues for Excellence(Endodontic Diagnosis)に掲載されているケースをもとにクイズを行い、一人一人に答えていただいた。
この後、昼休憩をはさみPAの撮影方法について説明した。
特に偏心撮影についてである。
正方線のPAだけではなぜ抜歯しなければならないのか?意味がわからないだろう。
しかし、
もう一枚角度をつけたPAを撮影するとその意味を知ることになる。
CBCTがない時代はこうやって物事を判断していたのだ。
このように歯内療法を行う歯科医師にとって、偏心撮影は必須のものであるがこれをルーティンに撮影しているのは、歯内療法に興味がある歯科医師のみである。
保険では2枚撮影してはダメだと言う。
何度も言うが、
ダメなのはあなたではなく、そこの院長や架空の国Japanだ。
あなたがまともな歯科医療をしたいのであれば、それは保険診療から外れるし自由診療のみになる。
が、予防的な処置(クリーニング、スケーリングなど)は保険で行うべきである。
そうした歯科医療を自費で行おうとする集団もいるが誰がそんなことに高価な費用を払おうとするだろうか?
非常に奇特な方たちだ。
と言うことでPAについて説明した。
これについてはこのサイトが非常に優れている。
なぜPAで撮影した歯牙が伸びてしまうのか?縮んでしまうのか?に詳しく解説がある。
これよりも詳しい解説本を私は知らない。
そして非常にわかりやすい。
が、偏心に関しては解説がイマイチだ。
それも仕方がない。
こうした行為は実習しないと身につかないからだ。
が、下顎の大臼歯にフィルムを入れると通常痛いので、まず伝達麻酔をしてそれからラバーダムをかけてPA撮影に移行した。
ということで、まず麻酔の説明から行った。
以下のYoutubeサイトが非常に有益である。
ここの解説で言っていることが理解できればあなたはもう大丈夫だろう。
最近はYoutubeには字幕機能がついているので字幕を見れば大体の内容はわかるだろう。便利になったものだ。
そしてこれだけではクランプがかけられない。
そこで、必要なのが頬神経ブロックである。
以下の動画が理解に役立つ。
理論は、USCの麻酔の大御所、Stanley Malamedに私は教わった。
彼は多くの麻酔の教科書を出している。
麻酔に興味がある方は是非購入を勧めるが、全て英語だ。
が、いい教科書である。
この点でも私はUSCでよかった、と言える。
ということでPAを撮影してもらった。
以下になる。
若干、コーンカットしているが問題はほぼない。
偏心撮影もしてもらった。
この方のPA撮影は上手だ。センスもある。
またこの被験者(患者役の方)はRadix Entomolarisがある方だ。
が、その先生はそれが何か?知らなかったようだ。
自分の歯なのに、である。
以下の複数の記事を見て学習してください。
穿通の必要性?根管治療の問題??修復治療の問題???〜#30 Re-RCT+Core build up with Fiber Post
#30 M, D, Radix Entomolarisにそれぞれ根尖病変を有していた歯のInitial RCT, 6M recall
#30 M, D, Radix Entomolarisにそれぞれ根尖病変を有していた歯のInitial RCT, 6M recall
難しい根管なので成熟が必要である。
次の被検者のPAは以下である。
PAがきちんと撮影できていない。
この方はもっと練習が必要だ。
同じ歯を偏心で撮影してもらった。
これは良く撮れているが、フィルムが奥に入りすぎていて#31が偏近心で撮影されているような画だ。
偏近心の際のフィルムの位置付けを復習する必要があるだろう。
最後の方は以下になる。
根尖部が入っていない。
フィルムの位置付けを復習する必要がある。
これでは見たいところが見えない。
また、#19は生活歯髄療法を行なっているので近心根が石灰化している。
次が偏心である。
これは咬頭が切れているが根管はよく見えている。
が、咬頭が切れているから惜しい、70点だ。
この方の歯牙に生活歯髄療法がなされている様が見えない。
これでは説得力のあるPAとは言えない。
と言うことで各自、修正ポイントも明らかになっただろう。
と言うことでこの日の講義は終了した。
4月からのBasic Courseもよろしくお願いいたします。