バイト先での経過観察。
患者さんは2018.10.2に以前の歯科医院に来院された。
その当時のPAは以下になる。
2018.10.18に再根管治療を行なった。
2018.10.24に#30のRe-RCTも行なった。
この後、患者さんはイギリスに帰国されたので私はその後どうなったか?わからなかったがメールで連絡が来た。
松浦先生、お久しぶりです。
福岡も緊急事態宣言だとの事ですが、先生ご無事でいらっしゃいますでしょうか。
1月に福岡に帰るつもりが、このコロナ禍でしかもイギリスからなので今回の帰国は延期したのですが、前回治療した右の一番奥の歯のあたりの歯茎の腫れが大きくなり、白いコブも出たりするようになりました。
次の帰国は4月を予定してますが、この状況下でどうなるかわからず、とりあえず、イギリスのendodontistに予約出来たらこの腫れを診てもらおうと思ってます。
とりあえずなので、また4月に帰れたら先生が勤務されている歯科医院に行かせていただくつもりですが、状況をお伝えしておこうと思いまして連絡させていただきました。
イギリスとは桁違いとは言え、予測のできないこのコロナ禍での診療など、本当に大変かと思われますが、どうか引き続きご自愛くださいますよう。
今後ともよろしくお願いいたします。
PAがメールには添付されていた。
治療前と比べてだいぶ根尖病変は縮小している感じがしたが、SInus tractがあるということは治癒していないということになる。
イギリスの歯内療法専門医にかかるという相談があった。
以下、その先生のご意見です。
本来なら再根菅治療で1番下までいきたいところだが、この場合、今すでに削られてる方向からより下に進めるのは角度的に無理とのことで、
①抜歯
②上手く綺麗に抜けたら、それを使って意図的再植術
③骨から削るアプローチもできない事はないが、それはおすすめできないとの事(Apicoectomyのことを言っているのだろう。)
なので、選択肢としては①か②という事でした。
このまま放置して、隣の歯にまで影響を及ぼしたくないので、この①か②かどちらかで今悩んでいます。
ただ、②をやってみたところで、この状態だと正直、それできちんと治るか可能性としては何とも言えないとの事でした。
最悪再植が失敗に終わってもその時に抜歯すれば問題ないのか、それとも再植なんて、感染してる歯をまた戻すのだし、歯がきちんとくっつくまでの間に結局また菌が侵入するのでは…とか、むしろ癌と一緒で、もう温存するよりいっそ取ってしまった方が隣の歯も安全でいいのではとかいろいろ考えてしまいます。
もし②の方向で行く場合には当日3Dを撮ったりするとの事ですが、今のところこのレントゲンのみです。
本当、お忙しい中恐縮なのですが、アドバイスよろしくお願いします。
イギリスでIntentional Replantationを提案されたらしい。
しかし、主治医は
きちんと治るか可能性としては何とも言えない
と患者に返答している。
いや、治るんですけどね90%
やったことがないのかもしれない。
何れにしてもイギリスの歯内療法専門医に私の疑問点をぶつけてみた。
それが以下のメール文章である。
Dear Dr. 〜,
I’m Dr. Akira Matsuura has lived in Fukuoka, Japan.
I graduated from USC 2016, practiced limited root canal Tx.
The pt. was my patient.
I did RCT #31 at 2018/10/18.
As compared this time, PA seemed better but the pt said “I have sinus tract”.
This means she needs Intentional replantation #31.
Before she tries this procedure, she worries about several things.
- Are you doing root resection?
- Are you doing the retro-preparation?
- What material are you using in this case? MTA? Super EBA? BC putty?
Please let me know these questions.
その日のうちに返事が来た。
Hello Dr Matsuura,
Thank you for your email.
I have discussed this option with〜(この患者).
If we proceed with this I will be checking for any cracks in the root upon removing the tooth, as I am suspicious there may be a fracture associated with the mesial root (there is periodontal pocketing here on the lingual aspect).
If no crack is found, I would resect the root end, prepare the root end and then fill the root end with MTA prior to reimplanting it.
I have stressed to her that this treatment has a very uncertain prognosis and outcome.
I hope this helps answer your questions
Best wishes
この治療方法はとても不確実な方法で予後を保証できないと説明しているという返事が返って来た。
私は患者さんに以上の内容を説明した。
おそらくあまり経験がないみたいだがまあ専門医だから何とかなるのではないか?という説明をした。
患者さんはこのイギリスの専門医の歯科医院を受診した。
そして以下のような報告があった。
松浦先生、おはようございます。
無事、治療終わりました。
綺麗に抜けたとの事で、そのまま戻すことが出来たそうです。
縫合すらしなくて良かったそうです。
思いの外状態が良かったので、私よりむしろ先生の方が驚いてました。
とりあえず、2週間後にまた診察していただき、その後も経過をみていって下さるとの事でした。
日本に帰る際には経過のX線など、まとめて送ってくださるとのことでした。
施行前には何度もご相談に乗っていただいてありがとうございました!
取り急ぎご報告させていただきました。
本当にありがとうございました。
施術医がこの結果に驚いていたようだった。
うまくいくとは思わなかったのだろう。
いや、この歯は確実に抜けるし根も長いから破折がなければうまくいく歯である。
ということでこの患者さんが日本に帰国された。
私はバイト先の歯科医院でこの患者さんを拝見することができた。
検査の結果は以下のようになる。
#30 Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)
#31 Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)
PAは以下になる。
痛みもSinus tractもなく予後は良さそうである。
患者さんも抜かないといけないのではないかと危惧されていたが歯を保存することができた。
しかし、このクラウンの適合は気になるが、患者は今の所問題なく過ごせているのでそこには言及はしなかった。
このようにイギリスの先生はおっかなびっくりでこの治療をしたかもしれないが、Intentional Replantationは適応症であればその成功率も高いし、歯の保存がうまくできるのである。
が、これが永遠に持つとは私は考えていない。
いずれ破折したり、カリエスができたりいつかするだろう。
その時、やりかえれるような状況の歯であればいいがこれはその時にならないとわからない。
患者さんはイギリスには当面戻らずに日本に滞在するそうである。
また問題が起きれば診察することになるがそうならないことを私は祈念している。