近年、Gutta Percha Pointを除去するためのNi-Ti Fileが多く紹介されている。
しかし私はその存在には従来から懐疑的だ。
理由は、
私はクロロホルム(C-solution)で古いGutta Percha Pointを溶かして形成しろ、と言う文化でUSC(南カリファオルニア大学)歯内療法科大学院時代を過ごしたからである。
クロロホルム(C-solution)を忌み嫌う人たちは一定数いることは私も承知している。
私もそのクチで育った?人間だからだ。
が、今でも思い出すUSC時代のCaseプレゼンの際に、
お前はGutta Percha Pointをどうやって除去したのか?とチェアマンのラスティンにクロロホルム(C-solution)を使用しないのか?と言う質問に対して、
発がん性があるから使用しない
と答えた時だ、
烈火のごとく私はその場で全員からボコボコにされた。そして日本語でもそのような文献があるなら明日持ってこい!💢と激怒された。
そう。
確かにこの業界にはそのようなエビデンスはない。
あるのは、
①クロロホルムは根管充填溶解剤の中で最も溶解能力が優れている
→Tamse 1986 Gutta-percha solvents–a comparative study
②クロロホルムのみがGutta Percha Pointを全て溶解できる
→Kaplowitz 1990 Evaluation of Gutta-percha solvents
③催奇性や発がん性もない
→クロロホルム(環境庁)
④根尖から逸出してもその量は極微量で健康害もない
→Chutich 1998 Risk assessment of the toxicity of solvents of gutta-percha used in endodontic retreatment
⑤治療中にそれを吸っても人体に毒性が発揮できる量を超えない
→Mcdonald 1992 Chloroform in the endodontic operatory
⑥大腸菌を優位に殺してくれる
→Edgar 2006 The antimicrobial effect of chloroform on Enterococcus faecalis after gutta-percha removal
というようなエビデンスはあるが、
それを吸って
気分が悪くなるだとか、
治療の結果が悪くなるとか、
発がん性があるだとか、
そうした類のエビデンスは一切ないのである。
これは前回のBasic Coueseで説明した通りだ。
ということは、だ。
C-solutionを使用してNi-Ti Fileで除去すれば楽に Gutta Percha Pointが除去できるのではないか?と多くの臨床家は思うだろう。
さて、それを踏まえて今回は
どのGutta Percha Point除去用のNi-Ti Fileが優れているのか?をCaseを元に私の意見とともに述べたい

と思う。
紹介患者さんの治療。
患者さんは米国に在住の日本人の方で治療の都度、コミュニケーションが取れやすい日本に帰国し歯科治療を受けられている。
その主訴は、
右上奥歯、アメリカで根管治療した歯で噛むと痛い…
である。
PA(2025.8.28)

強い冷水痛と歯髄に迫る虫歯のある#4, 咬合痛、打診痛もある#3が治療となった。
CBCT(2025.8.28)
#3
MB
DB
P

#3 MBのみに病変がある。
おそらく、MB2の見落としだろう。
歯内療法学的診断(2025.8.28)
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: Re-RCT
同日、再根管治療へ移行した。
#3 Re-RCT(2025.8.28)
MBは湾曲していたので除去用のNi-Ti Fileで除去を試みた。
術後にPA, CBCTを撮影した。


MB
DB
P

MBに私は唖然としてしまった。。。

思いっきりトランスポーテーションさせていたのである。
やはり、Pathway Of the Pulpの指摘通りやるべきであった。。。

ということで、後日これを修正しなければならなくなる。
その方法は、Apicoectomyだ。
再根管治療ではない。



このように、
Gutta Percha Point除去のNi-Ti Rotary Fileを使用してサクッと? Gutta Percha Pointを除去しようと試みる方法は私には向かないようだ。(前歯などのストレートな形態の場合を除く)
やはり、C-solutionで溶かして Gutta Percha Pointを軟化させてC+ Fileで穿通を試みた方が楽である。
私は元来、器用な人間ではないし、サクッとやるというその心が浅ましい?のかもしれない。
が、上記術式がうまくいかないときはApicoectomyを行うとその問題は90%の可能性で解決できる可能性があるという点は見逃せないところだろう。
今日は、こうした新しい器具の私の感想と古い材料(C-solution)に対する私の意見を記述した。
参考にしてみていただきたい。



