当院の経過観察症例。

最初に結論を言うと失敗症例だ。

初診は2022.2.2。

そこから半年が経過したので6M Recallに患者さんを呼んだ。

当時の主訴は

右下の奥歯の根管治療希望

であった。

患者さんによれば、

1ヶ月前までは冷たいものに染みていたがここ最近は何も感じなくなった

とのことである。


歯内療法学的検査は以下である。

初診時歯内療法学的検査(2022.2.2)

#30 Cold NR/20, Perc.(+), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)

#31 Cold+4/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)


PAは以下である。

PA(2022.2.2)

#30にはクラウン修復がなされている。

これをやると、歯髄に大きな負担が加わるので歯髄の石灰化につながるという弱点がある。

PAでは根管中央部からの根管が見えない。

またセメントで覆髄しているように見える。これも歯牙を歯髄の石灰化を招く状況に落とすので問題だ。

そして、患者さんはその歯に痛みがある。


CBCTは以下である。

CBCT(2022.2.2)

某社のCBCTなので歯牙の回転ができない。

切りたいところで見れないので、エンド(歯内療法)には適していない。

適するのはやはり、ヨシダのCarestreamのCBCTだ。

USCと全く同じのあのCBCTはモリタのCTで撮影してCarestreamで再生していた。

日本では大人の都合でそれが難しいそうだ。


近心根(M根)

根尖部は石灰化しているのだろうか?よく根管が見えない。

根管治療が難しいという事実はわかるだろう。

穿通するにはどうすればいいだろうか?といえば、

①SXで上部構造を落としてC+ Fileで穿通試みる

②SXで上部構造を落として#10.05/#10.04/#10.02を高速回転で回して穿通を試みる

くらいしか手がない。

そしてこれはUSCでよく言われていたことが、

CBCTを撮っても穿通できるとは限らない

という事実である。


遠心根(D根)

ここも根尖部は石灰化が進んでいるようだ。

治療が難しくなるような状況は避けるべきだが…何を重視するかにそこはよるのだろう。

遠心根の根尖部も石灰化している。

穿通しそうにないだろう。


診断は以下である。

#30

Pulp DX: Pulp Necrosis

Periapical Dx: Chronic apical abscess

Recommended TX: RCT+Core build up


推奨される治療はここはApicoectomyでなく、根管治療だ。

ただ穿通できなければ私は勝負に負けるだろう。

この根管治療に勝てるか?負けるか?はわからないが、チャレンジしてみることにした。


#30 RCT+Core build up(2022.2.2)

☆以下、治療動画・画像が出てきます。不快感を感じる方はskipしてください。

このブログで何回か述べているが、ラバーダムを#30にかけて、ジルコニアを削合可能なダイヤモンドバーでチャンバーオープンして治療開始になった。

動画の後半に赤いマテリアルが見える。

それは出血でなく、かつて誰かが歯髄を守ろうとした、”ベースセメントの証”だ。

そしてそれが石灰化を進めているというところまでその先生は考えが及ばなかったのだろう。

物事には長所と短所があるのだ。それは歯科治療も同じである。


髄腔内に麻酔を打ちながら根管治療を試みたが…全く穿通しない。

Hand File, Rotary Fileで穿通を試みたが…全くダメであった。


作業内容は以下になる。

D, ML, MB全て閉鎖していた。

口腔内が狭くうまくPAが撮影できない…

これが何とかの1枚だった。


そのまま根管充填した。

このまま半年置いて経過を見ることになった。

#30の病変は治癒するだろうか?


6M Recall(2022.8.16)

半年経過してそこに現れたのは、絶望?であった。

再度、歯内療法学的検査を行った。

#30 Cold NR/20, Perc.(+), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#31 Cold+6/4, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

根管治療を行なって半年経過したが、

Sinus tractは消失したものの、

打診痛は取れていない。

以下がその時の検査動画である。

分岐部病変はなさそうだ。


PA(2022.8.15)

分岐部病変は治癒するどころか根尖部へ広がっている。

このPAを初めて見たら、誰もがペリオだ!というかもしれない。

が、今まで見ていただいたように

この歯はエンド(⇨ペリオ?)

である。

が、私が行った根管治療はあまりいい結果を引き出せなかった。

そこで私は外科治療の話をした。

しかしこの歯は右下である。

したがって右利きの私にはやりにくい歯ということになる。

治療費は大臼歯の外科治療である¥190,000⇨¥180,000×1/2=¥90,000+taxおよび前歯の外科治療費の半分¥130,000⇨¥120,000×1/2=¥60,000+taxで合計は¥150,000+tax=¥165,000(税込)と説明した。

患者さんは当初はImplantを希望していたが、私と話をしているうちにやはり歯牙は残したいという気持ちに変わり、Apicoectomyをする方向性になった。が、口唇はやや硬い患者さんである。治療の際のマネージメントが難しそうだ。が、やるだけである。

患者さんの現在の生活環境が多忙なため、年明けの1月にApicoectomyすることとなった。

またその模様は報告したい。